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2-1 狩人のセンリ(1)

 06,2016 21:47



ようこそ。サーヴァリアの森へ。


第二章 真実の森

1

見たこともない獣道を歩く。
湖の先は、今まで自分が知っていた森とは雰囲気が全く異なっていた。
外観は同じだというのに、どこか殺伐とした空気が流れている。
まるで、自分が幼い頃に恐れていた夜の闇と同じだった。
足が縺れそうになりながら、それでも歩いた。
雨はいつの間にか止んでいたが、その前に当たりすぎていたために体は冷えきっていた。
途中、何度も意識が朦朧としそうになるのを、唇を噛んで耐えた。

あなたがあの王子と結ばれる可能性があるというのなら、
私が全て探し出して、全て壊してあげる


「・・・・・っ」
やっと結ばれるはずだった。気持ちをただ伝えるだけでよかった。
それなのに、どうしてまたこんなことになってしまったのか。
魔女の所へ行っても、本当に魔法を解いてくれる保証はない。
でも、行くしかない。行かなくては。
その選択しか、私が彼と一緒にいられる方法がない。
荒く息を吐きながら、木を伝って前へと進む。
しかし初めて歩く場所だ、実際のところ本当に前へ進めているかは分からなかった。
それでも私は足を止めなかった。


どれだけ歩いたかは分からない。
時間は分からないがきっともうすぐ夜明けだろう。
朝になり、ベッドに私がいないと知ったら、きっと城中が大騒ぎになる。
ごめんなさい、でも今は城へは戻れない。
自責の念に駆られながら、一つの木の傍でしゃがみ込んだ。
もう足が動かなくなっていた。
私はそっと目を閉じる。ああでも、眠っては駄目。こんな得体の知れない場所で眠っては。
やってきた睡魔と戦っていると、ふと私は"何か"が聞こえてそっと瞼を開けた。
森の中、自分のではない荒い息音が聞こえてくる。
ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。
葉っぱを踏み分けて何かが近づいてくるのが分かった。
そしてその何かが姿を現し、私は悲鳴を上げそうになるのを堪え、後ずさりをした。
「・・・・と、ら」
ぐるぐる喉を鳴らしながら、太い足で自分に近づいてくるのは一匹の巨体な虎だった。
瞳に鋭い光を持った金色の目は確実に私を捕らえている。
そう、餌となる私の姿を。
逃げなきゃ。
思わず立とうとしたが、足はもうほとんど感覚を失っていた。
上半身だけがバランスを崩し、肘から後ろに倒れこむ。
逃げなきゃ。
そう思うのに体は言うことを聞かない。虎はすぐ目の前に迫っていた。
「や・・・」
このまま死ぬの?
彼に思いを伝えないまま?
「いやだ」
彼に届かないまま?
「―」
彼に、―。
「いやあああああっ!」
私の叫び声と同時に虎が私に飛びかかった。
思わず私は目を伏せる。
肉が切れる不快な音がして、顔に生暖かい液体が降りかかった。
強烈な血の匂いがする。
私は、死ぬの?
体をぬめぬめと滑り落ちていく血を感じながら、しかし私は
「・・・?」
ふと違和感に気づいた。
痛みがしない。
聴覚も嗅覚も触覚も-感覚は全て消えてはいないのに、あるはずの痛みを感じない。
私は瞼を開け、思わず目を見開いた。
「あ・・・・・・」
目の前に”あった”のは、今自分と対峙していたはずの虎だった。
しかし口を大きく開けたまま、血まみれで横たわっている。
その姿からはもう生を感じられなかった。
何故虎が、死んでいるの?
私は自分の体を見る。全身血まみれだが、傷は一つもなかった。
体についているのはきっと虎の血だ。
呆然と自分と虎を見つめていると、不意に後ろから誰かの声がした。
「こんな場所で、何をしている?」
私はそっと振り返る。自分の真後ろにたっていたのは、一人の青年だった。
顔をしかめて怪訝そうに見つめてくる彼の手には血が付着したナイフが握られていた。
ああ。
もしかして、あなたが助けてくれたの?
そう思い咄嗟に「ありがとう」と言おうとするも声は出てこなかった。
痛い。
喉が頭が足が腕が背中が肩が、― 心が酷くとても痛い。
「・・・ちょっと・・・え、おい!」
限界だった。
体の震えが、寒さからなのか悲しみからなのか恐怖からなのか、それさえも分からない。
焦ったような青年の表情を見たのが最後、私は意識を失った。


* * *


「…そう」
小さな暗い部屋で真っ黒な服を身に纏う少女は、壁に掛かっている大きな丸い鏡を眺めていた。
そこには若い男女の姿が映っている。
女の方は気を失っており、目を閉じて草の上に横たわっていた。
そんな女を心配そうに青年は顔を覗き込むと、頬についている赤黒い汚れを拭ってやっている。
その光景を見て少女 ―魔女は切なげに目を細めると、笑った。
「運命っていうのは残酷ね」
トントントン。
背後の扉が数回のノック後、開く音がして魔女は振り返る。
魔女よりも幾分も背の低い”誰か”が部屋に入ってきて、一度魔女の顔を見た後、
視線をその後ろの鏡へと映した。
森の中で体を休める青年と少女を見つけると、そっと魔女に言った。
「この子がオネット姫?」
魔女は頷く。
「それがどうして、」
「Div coV'ers n」
”誰か”の声を遮って魔女は一つ呪文を唱えた。
すると鏡は一瞬光った後、その姿を草原を描いた絵画へと変えていた。
その様子に驚き自分を見つめる視線に気がつかないふりをして、魔女は小さく笑った。
「・・・さて、たどり着けるかしらね」
真実に。

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