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5-1 お姉ちゃんへ(2)

 01,2017 18:58



翌日の放課後、僕はラビットメールのポストを確認しに情報室へと向かった。
夏休み中、ずっとポストは閉じたままにしていた。
美月ちゃんの手紙の件もとりあえずは解決したことだし、久しぶりにポストを開こう。
そう思っていたのだけれど ―
「嘘だろ・・・」
パソコンのデスクを見て僕は呆然とした。
鍵が開いている。
何故?…閉め忘れた?
―いや、それはない。きちんと鍵をかけたのは覚えている。
そうなると、考えられる理由は一つしかない。
おそらく誰かが鍵を壊してポストを強制的に開いたのだろう。
「一体誰が・・・?」
ポストの中を見ると手紙が二通入っていた。
上にあった手紙、おそらく後に入れられた手紙には封筒に記名がされている。
しかし、下にあった赤色の封筒には何も書かれていない。
僕はその封をそっと開き、中に入っていた紙を取り出した。
そこには封筒と同じ赤色で文字が書かれていた。
その文を僕は目で追い、
「・・・・・・!?」
思わず教室の中を見回した。
部屋は静まり返っていて、僕の立てる物音しかしない。
誰もいない、-そう今は。
僕はもう一度手紙に視線を落とした。
手紙にはこう、書かれていた。

"あなたは誰?
隠れても無駄よ。私があなたを見つけ出してあげるから"


自分の中で警鐘が鳴っている。
とにかく早く此処から離れた方がいい、そう思って僕はポストを開けたまま
二通の手紙を制服のポケットにしまい、教室を後にした。
平然を装って教室塔まで戻ってくると、僕は自分の教室に駆け込んだ。
放課後の教室には誰もいないと思っていたけれど、まだ残っている生徒が一人がいた。
藍那だった。
「藍那・・・?」
思わず名前を呼べば、机に向かって何かを書いていた藍那は弾かれたように顔を上げた。
「新倉君?…新倉君も残っていたんだね」
「うん、久しぶりに開けに」
敢えて何を、とは言わなかった。それでも彼女には通じると思ったから。
僕は先ほどの手紙を思い出す。
赤色の封筒、赤色の文字。綴られていた言葉は、恐らく僕に対する敵意だ。
一体誰がどうしてあんなものを書いたのだろうか。
「・・・・・・どうしたの?」
「え?」
「なんだか、怖い顔してるから」
珍しく心配そうな表情で藍那が僕を見つめていた。
言おうかどうしようか、一瞬躊躇ったものの僕はポケットから赤の封筒を取り出し彼女に渡した。
藍那は不思議そうにそれを見つめた後、そっと手紙を取り出し黙読していく。
「何・・・これ」
目を見開き、瞬きをも忘れたようにじっと手紙を見つめる藍那。
白く細い手からそれを取り返すと、僕は鞄の中に素早くしまった。
「分からない。ただの悪戯・・・って可能性もある」
正直なところ、悪戯にしては随分手が込んでいると思うけれど。
恐らくこの手紙の差出人がポストの鍵を壊したのだから。
「他にも何か入っていたの?」
「いや・・・あとはこれとは多分関係のない、普通の手紙が一通だけだよ」
僕の言葉を聞いて、藍那は何か考え混むように俯いた。
そして遠慮がちに言った。
「しばらく、止めといた方がいいんじゃない?」
「手紙を?」
「そう・・・なんだか危ない感じがする。もう一通の手紙も一旦送り返した方が…」
彼女の言い分はよく分かる。
赤い手紙が悪戯にしろそうでないにしろ、目立つことをしない方がいい。
正論だと思うし、そうするのが一番いいのかもしれない。
だけど、僕は。
「駄目だよ。勇気を振り絞って書いた手紙をそう簡単に無下にするようなことはできない」
簡単に伝えられる手紙なら、誰かに託したりしない。
ラビットメールに出される手紙は一種のSOSと同じかもしれない。
そしてそのSOSを、伝えたくても伝えられない気持ちを、僕が救ってあげなければいけないから。
ポストに入れられていた手紙をそっと藍那に手渡す。
藍那は無言で手紙を受けると、困ったように僕の事を見た。
「本当に大丈夫なの?」
「とりあえずはね。下手なことをしなければ支配人だってバレるはずはないと思うし」
藍那は僕の言葉にまだ少し納得できていない様子だったものの、
小さくため息をつくと「分かった」と頷いた。
そして周りを見回し、誰も近くにいないことを確認すると手紙を開いた。
「・・・読むわね」
藍那は静かに手紙を読み上げた。
「染山 莉那(そめやま りな)さま...」


"染山 莉那さま
突然こんな手紙を書いてすみません。
どうしてもあなたに伝えたいことがあります。
父のことを恨んでいますか。
父を奪った家族を恨んでいますか。
あなたが生まれてまもなく、僕の母は、あなたの父との間に子どもを― 僕を身ごもった。
そして父は幼いあなたとあなたの母を捨てて僕の母と再婚した。
当然、恨んでいることでしょう。
でも僕はずっとあなたを探していました。
僕に姉がいると知って、本当に嬉しかった。
優しいあなたが姉だと知って、嬉しかった。"


「差出人は不明。・・・こんなことってあるの?」
「内容が内容なだけに、安易に名乗ることができなかったんじゃないかな」
「それは分かっているわ、そうじゃなくてこの話が、よ。
現実にこんな話があるなんて、信じられない」
そう言って手紙をそっと折りたたむと封筒にしまい、僕に差し出した。
「まあ、ラビットメールをしていると時々こういうのもあるよ」
「…どうするの、これ」
手紙をそっと鞄にしまうと僕は腕を組む。
分かっているのは染山 莉那宛の手紙であること。
差出人は半分血を分けた弟であること。
肝心な弟の正体は不明。
姉と弟が今どんな関係でいるかも不明だが、
”優しいあなたが”とあるから、知り合える近い距離にいることは間違いない。
まずは弟の特定。
染山 莉那の身辺を探ることから、いつも通りに調査を進めていくしかない。
「染山って名前の女子はこの学年にはいなかったよね?」
「うん。三年の先輩よ、確か。何組だったかしら・・・」
「3年生かー・・・」
「誰か知ってる人はいる?」
そこで僕は、一人の先輩のことを思い出した。
3年C組― 水谷夏来(みずたに なつき)。
「いるにはいるけど…」
「けど?」
「少し苦手なんだよなぁ…」
夏来先輩は決して悪い人ではない。ただ僕は彼女に苦手意識を持っている。
ただ、赤い手紙の件もあるし、苦手云々で躊躇してる場合じゃない。
ラビットメールのためにも、夏来先輩に会って染山莉那の調査をしないと。
「とりあえず先輩に会ってくるよ。
分かったことがあったら連絡する、藍那」
「・・・・・・・う、うん」
妙な間の後に藍那はそう一言だけ言って頷いた。
僕は一度深呼吸をする。

さあ、夏来先輩に会いに行こう。



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