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2-3 仲間と共に(2)

 12,2016 21:38



少し前を歩くセンリの後ろ、ニックと私は並んで歩いている。
こうしてニックを見ると、普通の兎より体が大きいような気がする。
喋る兎という時点で普通とは違うのだろうけど、それも魔女の魔法が関係しているのだろうか。
それにしても白くて柔らかそうな毛にどうも胸がきゅんとする。
可愛い。
ついニックの体を持ち上げて、ぎゅっと抱きしめてみるとニックの体が少し強張った。
「な、にするんですか、オネットさん」
「ふわふわね。ニック」
「…兎ですからねー」
暴れたり嫌がったりしないことをいいことに、その毛並みを撫ぜてみる。
くすぐったいのか恥ずかしいのか、ニックの体が少し熱くなる。
「綺麗な色ね。まるで雪みたいだわ」
「そうですか?」
「ええ、とても素敵」
「…それを言うなら、あなたもセンリさんも綺麗な髪をしていますよ」
「そうかしら?」
自分の長い髪を一房掴んで眺めてみる、自分ではそうは感じない。
「でもセンリの鶯色の髪はとても綺麗だと思うわ」
そっと私たちは前を歩くセンリに視線を向ける。
灰色がかった緑の髪が歩く振動に合わせてさらさらと揺れている。
綺麗な森の、色。
「あなたの思い人の方は・・・?」
唐突にニックがそう言った。
「彼はとても綺麗なカナリア色の髪よ。まるで宝石のような・・・」
私は口を噤んだ。王子のことを思い出して一瞬胸が苦しくなった。
今彼は何をしているだろうか、何を思っているだろうか。
城は、皆はどうしているだろうか。
ニックはじっと私を見つめると、慰めるような優しい口調で言った。
「…大丈夫ですよ」
私はそっと腕の中の小さなニックに微笑む。
「ありがとう」
「とりあえず下ろしてください。さすがにこんな風にされていると恥ずかしいです」
「兎なのに?」
「兎なのに。」
分かったわ、そう言って笑うとニックはすとんと地面に降りた。
名残惜しくニックを見つめるとニックは困ったような顔をして「駄目ですからね」と言った。
今度はいつ触らせてもらえるだろうか。
そう思っていると、突然前を歩いていたセンリが私とニックの名前を呼んだ。
「・・・?」
足早にセンリの所へ駆け寄ると、センリは目の前を指差す。
そこは峡谷で、遥か下に飛沫を上げて渓流が流れているのが見えた。
随分と高いところまで登ってきていたことに驚く。
川を挟んだ向こう岸とこちら側は古びた吊り橋で繋がっていた。
「落ちたらまず助からないな。ニック、道はこっちで合っているのか?」
「はい、あってますよ]
前日の滝でさえ高く感じたというのに、この高さに足がすくまないわけがなかった。
目の前にある吊り橋は、ひっそりと静かにそこで私たちを待っている。
まさか落ちたりはしないと思うけど、・・・慎重に進まなくては。
またセンリが先頭を進み、私、ニックと続いた。
ギイッという橋が軋む音に、時々心臓が止まりそうになる。
思ったよりも揺れは激しく、しっかり掴まっていないとすぐにバランスを崩しそうになった。
絶対に下は向かない。
向いたらきっと、足が竦んで動けなくなる。
何度か足がつっかえそうになると、センリがすぐに気づいて手を差し伸べてくれた。
「ありがとう、センリ」
「ここ数日で、オネットが無防備で目が離せない女の子だってことは理解した」
確かに私はセンリやニックに助けてもらってばかりだった。
そしてその上、自分では自覚はないけれどどうも私は衝動的らしく、
見ていてひやひやする時がある、と二人は言った。
「よし、あと少しだ」
センリがそう前で励ました頃、
「魚が一匹、魚が二匹」
私に後ろから呑気なニックの声が聞こえてきた。
脱力しそうになって、思わず強く橋を掴む。
そっとニックの方に視線を向ければ、ニックは下を見下ろしながら呑気に魚を数えている。
もう。ニックったら。
無事に吊り橋を渡り終えると私は真っ先に、ニックのふわふわな体をくすぐった。


更に二日ほどが立ち、森で夜を過ごすことに少しずつ慣れてきていた。
初めてセンリと過ごした夜以来、センリは魔法を使わなかったが、
それでも二人が傍にいると安心して眠ることができた。
朝。
センリと一緒に、近くに生えていたキノコを吟味しながら取ると、
オローと呼ばれる鳥の卵で作ったスープに入れて食べた。
温かいそれを飲みながら、ニックは言った。
「卵はいいんですけどねー。ぼく、キノコ苦手なんですよ」
「好き嫌い言うな。食べられるものがあるだけでありがたいと思え。
・・・どうしたオネット?」
「私も実はあまりキノコが・・・」
「どうして取っている時にそれを言わなかった・・・」
流石に三人中二人がキノコ嫌いだとは思わなかったのか、センリが呆れたようにため息をついた。
さておき。
「ニック、城まではどれくらいか分かるか?」
「そうですね・・・もう少し歩いた辺りできっとモーガニート鍾乳洞が見えてくると思うので、」
ニックは地面に石で簡単に地図を描いていく。
「そこを過ぎて・・・鴉ナキノ沼を超えたら着くかと」
「モーガニート鍾乳洞?」
ニックの言葉をセンリは顔をしかめると、小さく繰り返した。
「位置的にはありえない。あの場所はもっと東にあるはずだが・・・これも魔法のせいか」
「はい。地形は原型が分からないほどに細工をされていますね」
まるで間違ったパズルのように。
「ねえ、その鍾乳洞と沼を超えたらもう城なのよね?あと少しってこと?」
そう聞けばニックは一つ頷いた。
あと少しで魔女の城。
不安と喜びが交差して、私はそっと胸を撫で下ろした。あと少し。
その様子を見ていたのか、センリが小さく笑って私の頭にそっと手を乗せた。
「あと少し、頑張るぞ」

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