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2-3 仲間と共に(3)

 12,2016 21:38



「もうすぐモーガニート鍾乳洞に着くはずなんですが」
ニックが言うには正午までには鍾乳洞近く辺りに到着できるだろう、ということだった。
しかしどれだけ歩いても、まだそれらしきものは見つからなかった。
「もしかしてまた地形を変えられたか・・・?」
センリの言葉に、そんな、と自然に口から言葉が零れた。
あと少しで着くのではないの?
「…おかしいですねー」
背の低い木々の茂みが先に見えて、ニックがそれに近づいていくとその中に頭を突っ込み、
「え?」
そして驚いたような声を上げた。
「どうした、ニック」
「覗いてみてください」
言われるがままに、私はセンリと枝を少しどけてニックが言う茂みの奥を覗いた。
「…これは」
そこに見える景色は、今歩いていた周りの景色とはまるで違っていた。
木一本、草一本生えていない、殺伐とした広い空間にはたくさんの砂が地面を埋め尽くしている。
それも今まで見たことのない、真っ黒なまるで灰のような砂だった。
風が吹けばそれは空へと舞いあがり、闇を作るかのように広がる。
「不気味だわ・・・」
「ニック、これが何処だか分かるか?」
「・・・"ミュヘン砂漠"ですかね」
「やっぱりそうか」
センリとニックにはこの砂漠に心当たりがあるらしい。
一人分かっていない私に、センリは説明してくれた。
ミュヘン砂漠は、サーヴァリアの北に位置する小さな砂漠で
猛毒性の蛇やサソリ、その他にも巨体な未確認生物が沢山いるために
ほとんど人が立ち入らない"死の砂漠"と呼ばれている場所らしい。
「森を抜けたわけじゃないのよね?それならどうしてその砂漠がここにあるの?」
「その疑問自体がきっと答えだな」
この先に ― 魔女の城があるから。
魔女は城に私達がたどり着かないように砂漠を森の中へと移動させた?
思わずセンリを見つめると、センリは頷いてそれに肯定した。
それならばこの砂漠をどうするかなんて、選択肢は一つしかない。
「進むしかないですね」
本来なら何かに乗って渡りたいところだけれど、そんな準備ができるはずもない。
果てが見えない漆黒の世界をただ睨む私の横で、
センリが鞄から布きれを引っ張り出し、小さく切り始めた。
そして出来上がった布を三人分に分けると、私とニックに渡した。
「まずは頭をこれで巻いて。
その次は靴に、隙間が無くなるように布をしきつめるんだ。
ニック、お前は靴替わりに手足を布で軽く包んだ方がいい」
てきぱきとそうセンリは指示すると、今度は筒に入った水の量を確認し始めた。
私はニックの手足を取れないように布で縛ると、自分の頭を覆った。
「そうよね、日差しが酷い。倒れたら大変だものね」
砂漠を渡ったことなんて私には勿論なかった。
もしセンリがいなければ、どうしていいか分からず途方に暮れていたかもしれない。
私はそう思いながら、準備を急いだ。
「行くなら早い方がきっといいですよ」
ニックは言う。
「雨が降って溺死・・・なんてことにもなりかねないですからね」
溺死。その言葉に思わず身震いすると、センリが弓を手に持って立ち上がった。
「行くぞ」


砂漠の砂は、予想以上にさらさらとして粒子が細かい。
しかし、深く積もったその中を歩くのはやはり容易くはなかった。
さっきセンリに言われ、布を詰めたおかげで靴の中に砂は入ってはこなかった。
森で暮らしていたからだろうか、センリは色々なことを知っていてとても頼りになる。
「少し歩く速さを速めるぞ。夜になる前に渡ってしまわないと」
「ですね。砂漠で野宿するにはぼくたちはあまりにも無防備すぎますからね」
「そうね。急ぎましょう」
「オネットさん、疲れてないですか?大丈夫ですか?」
「まだ大丈夫よ。それよりもニック、あなた意外と体力があるのね・・・」
息ひとつ上がっていない小さな体を見下ろしながら、私は感心して呟いた。
「ぼくをただのか弱い兎だなんて思っちゃあいけませんよ」
「・・・川を為す術もなく流されてきた兎は何処の誰だったか」
「センリさん、それは忘れてください」
歩いていると時々、砂煙が起こり、真っ黒な砂が目の前を舞った。
その色が、その様子が魔女を思い出させる。
まるで。
そうまるで、私たちを嘲笑っているかのように、私たちの周りで吹き荒れる。
「わ・・・これはまた」
ニックが手で目を覆った。一段と大きな砂嵐が近くで起こったのだ。
そっと近づいてくる黒い砂の風。

― あなたが嫌いなのよ、オネット。

(魔女。あなたは、)
真直ぐに向かってくるそれに瞬きもせず直視をしていると、急に視界が暗くなった。
「目を閉じて。ついでにも口も。体中砂まみれになるぞ」
センリの声が耳元で聞こえた。
どうやら私の目を手で覆ってくれているらしい。
ありがとう、と言いかけたが言われた通りに口を閉じた。
ぼんやりしていた自分に反省しながら、私は手探りでセンリの顔を探した。
頬に触れ、鼻に触れ、瞼に触れる。
「・・・!」
驚いたからか、体が大きく揺れたセンリの目を、
センリが私にしてくれているように、自分の手でそっと包んだ。
しばらくして砂嵐が収まると、私たちは同時ぐらいに手を離した。
物言いたげにセンリは私を見たが、結局何も言わずにまた歩き始める。
「俺の後について」
誰かが一度通った後は比較的歩きやすい。
センリの自分より大きな歩幅に合わせ、静かに歩くと、
「・・・なんといいますか、なんだかぼくお邪魔者みたいですね」
ニックの独り言が後ろから聞こえた。

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