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3-2 双子座の箱(3)

 26,2016 21:25



「ニック」
突然涙をこぼし始めたニックに触れた -今度は拒まれなかった。
私は小さなその体をそっと優しく抱きしめた。
ニック、泣かないで。誰もあなたのことを恨んでなんかいないのよ。
「でもぼくはそれでもアイナの仲間なんです。一番大切なのはアイナなんです」
震えながらニックは必死に私に伝えた。
ニックにとってアイナさんはとても大切な人なのだ。
それ故にあの夜も、私を殺そうとした。
でもそれは本心からそうなることを願ってしたわけではない、― それが真実だった。
そこまで分かったなら、もう十分。
「分かったわ、ニック。あなたがアイナさんの仲間だとしてもいい。
私はあなたが一緒に来てくれたら嬉しいわ。
もしあなたが少しでも私達と一緒にいたいと思ってくれるのなら」
「・・・何のお役に立てないかもしれない。それでもですか?」
そんなこと。
ちらりと横目で見ればセンリが優しく笑いながら言った。
「今までの旅で、お前に何かを期待したことはそんなになかったと思うが」
センリの冗談につい笑ってしまうと、ニックは少し頬を膨らませて不機嫌そうに目を細めた。
「笑うなんて・・・酷いじゃないですか」
「ごめんね、つい」
更にぷくっと頬を膨らませながらも、ニックもどこか嬉しそうに見えた。
一呼吸をおいてから、ニックは私の腕から離れると、じっと私の目を見つめた。
そして少しかしこまったように背筋を伸ばし、言った。
「あと少し、アイナの所に行くまでの時間・・・ぼくは、あなた方と一緒にいます。
どうか一緒にいさせてください」
センリが頷き、私は膝を折って視線を合わせてからニックに言った。
「おかえり、ニック」


ニックが戻って、そしてセンリの探していた形見のペンダントも見つかった。
「・・・アイナの所に行くぞ」
あとは、この身に降りかかった魔法をアイナさんに解いてもらうだけ。
私達は財宝室の扉を開いた。
その時不意に、私は部屋を振り返る。
そこには相変わらず眩しいほどの宝石が、沢山無造作に置かれている。
その中にはもうあの双子座の宝箱は、ない。
私は後ろを歩くニックを振り返る。
「ねえ、ニック。緑の箱の中には何が入っていたの?」
消えてしまったもう一つの箱。
空っぽだったのだろうか、それとも違う何かが入っていたのだろうか。
単純に気になってそう聞けば、ニックは首を横に振って優しい声で言った。
「気にする必要はありませんよ。あなた方に関係するものは何も入っていませんでしたから」
それ以上ニックは何も教えてくれなかった。
私たちは財宝室を後にし、再び暗い牢に出る。牢の鍵は開いていた。
ホールまで戻ると今まで暗闇にいたからだろう、普通の照明さえ眩しく感じた。
そういえば一体今は何時なんだろうか。
眠気や疲れをあまり感じていないことが、とても不思議だった。
「ニック、一応聞くが・・・」
「はい?」
「アイナは自分の部屋にいるんだよな?」
センリがそう聞けば、ニックは苦笑いをしながら言った。
「ぼくはアイナの仲間っていうのは根本的には変わってないんですよ?」
それはアイナさんに関することは言えない、ということだろう。
でもそれを承知でニックと一緒にいることを望んだのだ。
今更突き詰める気は全くなかった。
しかしニックは私をじっと見つめると、小さくため息をついた。
「まあ・・・とは言っても特に支障がないと思うので言いましょう。
彼女は四階の自室にいます。ですが、四階への階段は消滅していました」
「何・・・?」
「ぼくもどうやって彼女の元へ行けばいいか分からないんです」
そう言ったニックは嘘をついている様子はなかった。
本当に四階への道は閉ざされてるのだろう。
「一階ずつ調べていく必要があるということか」
「そうね・・・。一階は大体見て回ったわよね」
地下も牢とあの財宝室しかなかったから、もう行く必要はない。
「順番からすると二階だな」
「ええ、二階に行きましょう」
二階へと私達は向かった。
その途中で隣にいるセンリとニックを見て、つい笑みが零れた。
二人は久しぶりだというのに、相変わらず憎まれ口を叩きあっている。
それほど気が合って、仲がいいということだろう。見ていてとても微笑ましくなる。
「何笑ってるんだ、オネット」
「いいえ、何でも?」
そう言いながらも、私は笑いを抑えきれずに口元を軽く手で押さえた。
三人でいられることがどうしようもなく嬉しかった。

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