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After(M&S)

 14,2016 22:23



命尽きるまで、あなたを愛し抜くと誓ったから。


― After Amour vrai (Mitsuki & Senri)


自分の気持ちに素直な優しいアテナンティスの姫ミツキは、
姫を守った亡国の王子- センリと結ばれた。
ミツキとセンリはアテナで共に一緒に過ごし、ある年一人の息子を儲けた。
笑顔の絶えない毎日であった。
ずっとそんな日々が続いていくかと思われた。しかし。

かつて一国が滅びる時、魔女は言った。
「・・・あの国は、滅んだ方がよい。
そしてセンリ王子だけを救いだしたとしても、
王子という存在が残っていれば、それはまたいつかの戦争の火種となろう」
この言葉が現実になろうとは、誰も予想だにしていなかった。

センリはミツキと結ばれた後、メルディスの再興を目指していた。
それはかつて自分が国の王子であった使命感、
また他国に亡命し、センリの生存を聞いてメルディスの復活を望んだ国民の声による。
そしてそれはセンリの聡明さをもって、早くも十年ほどで叶うこととなる。
王女ミツキがセンリにかつてのメルディスの土地を返上し、
再興を手助けしたからである。
メルディスは小国家ながら、多くの国の進んだ技術を習得し、立派な国へと発展していった。

やがてミツキはメルディス国に嫁ぐことになった。
しかし、その時に問題は起きた。
アテナンティス側が、二人の子どもをアテナの国の王子だと主張した。
勿論それにはメルディス側は激怒し、その子こそはメルディスの王子だと言い返した。
この対立が、再び戦争を巻き起こすことになった。
二人の間に王子ができたのが、ミツキがメルディスに嫁いだ後であれば、
状況は変わってきていたかもしれない。
だが、その前に王子は誕生した。
望まれてきた子、むしろ二つの国から望まれすぎた子だったのだ。

ミツキは、王子を無論メルディスに連れて行くつもりだった。
なんとかアテナンティス王の制止を振り切り、ミツキとセンリ、幼き王子はメルディスへと旅立った。
しかしその道中、彼らは何者かによって襲われる。
センリが必死で戦うも、無勢に多勢。圧倒的な人数に成す術がなかった。
そしてミツキと王子は攫われ、幽閉された。
― 母国アテナンティス国に。

センリはメルディスに戻り、葛藤した。
かつて彼は王子という立場で、戦争を憎み、そして自らの手でそれを終わらせた。
しかし彼はもう王子ではない、国の頂点に立つ王であった。
王に課せられた使命は大きかった。
「あれだけ憎かった戦争を、自らの手で始めなくてはいけない日が来るなんてな」
センリは嘆きながらも、弓を握った。

ミツキは幽閉された場所で、王子と一緒に脱出を試みていた。
自分が此処にいるから、戦争が始まる。
否― 自分が何処にいても、もう戦争は避けられないかもしれない。
だが、此処にいるとセンリはきっと身動きが取れないに違いない。
早く、センリの元へ。
早く、愛しい彼の元へ。
そう思っていた時だった、ミツキはアテナの軍師ミマルに捕まった。
ミマルは此処数年で、アテナの軍師にも軍の隊長にもなった男だった。
この男が来てからアテナは穏やかでなくなったと、そう言う者もいる。
冷たい色をした瞳でミマルは言った。
「ミツキ様。無礼をお許し下さい。
しかしながらあなた様にはこの国の ― 生贄になって頂きます」

小国家のメルディスを支持する国が幾つかあった。
それはかつてアテナの同盟国であるナオリオとの戦争で敗した国であった。
センリは、兵と共にアテナに向かって進軍を始めた。
無駄な死は望んではいない。
そうは言っても、現実にはそれは甘い考えであるとセンリは分かっていた。
一つの油断や過った判断が、国の民の命を奪う。
「・・・ミツキ、君の国の者を殺めたくはなかった。如何してこんなことに」
全ては、自分たちに課せられた王族という鎖のせいだった。
もしメルディスを復興していなければ ―・・・?
いや、それは有得ない。
自分という存在がある限りは、避けられない運命なのだ。
そして戦う理由はまだある。
どうしても彼女を取り返さなくてはいけなかった。
どうしても我が子を取り戻さなくてはいけなかった。
愛するべき家族を。
「ミツキ・・・どうか、無事で」

そしてついに、アテナとメルディスの軍が、ヤグ平野で対峙することになった。
センリは兵の先頭に立ち、矢をつがえた。
それに続き、兵達が次々に弓を構える。
アテナの軍の先頭には、軍師であり軍を率いる長でもあるミマルが立っていた。
しかしミマルは剣も持たずに、ただ笑っている。
その様子に違和感を感じたセンリは、あるものを見て目を見開く。
それは兵の前で、体を縛り付けられた愛しい妻の姿だった。
ミマルは言った。
「かつて、ミツキ姫は誰からも愛された姫であった。
しかし今は、メルディスに王子を連れ去ろうとしている重罪人である。
未来のアテナに幼き王子は必要だ。
だがミツキ姫は ―どうだろうか」
メルディスの兵は呆然とその光景を見ていた。
そうしている内に、アテナ・ナオリオ連合軍がメルディスの軍へと向かって来る。
このままでは、やられる。
しかし手を出せば、ミツキが―・・・。
センリは自分の兵達を振り返った。
「王として、この戦に参加するつもりだった。
だがすまない。彼女を犠牲にすることはできない、絶対に」
その言葉に兵士たちは、微笑み返して首を振った。
どんな決断をされようとも、誰もあなたを責めたりはしない、と。
センリはそれを見ると拳を握りしめ、目をきつく閉じた。
そうしないと、内に秘めた感情が全て溢れてしまいそうだったのだ。
そしてセンリは身を翻す、その姿は一瞬にして兵達の前から消えた。
「王が、消えた―・・・?!」
センリは十年ぶりに使用した魔法で自らの姿を透明にしたのだ。
そして馬に跨ると兵の間をすり抜け、ミツキに向かって全力で駆けた。
今行くから。
今行くから、どうか―

アテナ側も、センリが姿を消したことに困惑していた。
ざわざわと兵士たちが顔を見合わせ、混乱する。
その中一人 ― 軍師ミマルだけが冷静に前を見ていた。
「・・・風が来る」

ミツキまであと10メートルで手が届く。
この距離がもどかしい。
ミツキは怯えた顔をしていた。
どんなに怖かっただろう、どんなに不安だっただろう、どんなに痛かっただろう。
お前は何も悪くないのに。
センリは馬から飛び降りると、走りながらミツキに向かって手をまっすぐに伸ばした。
あと数センチ、やっと届く  ― という時だった。
空気を切り裂く音がセンリの耳に届いた、― その直後。
「・・・くっ」
センリは床に膝をひざをついてしゃがみ込んだ。
肩から右腕にかけて大量の血が流れていた。
ミマルはセンリを見下ろしていた、その手には血のついた剣が握られていた。
「そこにいたか、メルディス王」

ミツキは、目の前で大量の血を流すセンリを見て、愕然とした。
愛しい人の酷い姿に、眩暈と吐き気が同時に押し寄せてきて、叫んだ。
「やめて!どうしてこんなことするの!
かつてアテナンティスを救ったのは、センリなのよ!?」
ミマルは、そこで己の正体を語った。
「勿論知っている。かつて我はあの場に居た、ルモークスの兵だったからな」
その言葉にアテナの兵も唖然と、ミマルを見つめていた。
その時、二人は、アテナの兵達は気づいたのだ。
たった一人の復讐者によって二つの国が踊らされていたことに。
「・・・・・・なら、どうして私たちは戦って?」
震えるミツキを抱きしめ、センリはミマルに向かって叫んだ。
「・・・こんな戦争、無意味だ!今すぐ止めるんだ!!」
「― もう遅い」
冷笑しながらミマルが言った。
馬の足音が聞こえる。
気が付けば、メルディスの兵がもうすぐそこまで押し寄せていた。
王を、王女を、救わんと...敵国を攻撃しようと。
もう、止まらない。
「これで憎きアテナと・・・メルディスが消える」
ミマルの思惑通りに、全く無意味な命の奪い合いが始まるかと思われた。
しかし、その瞬間空が真っ赤に光った。
両国の兵が思わず足を止めて、空を仰いだ。
空にいたのは、腕を組んで不機嫌そうにミマルを見ている一人の魔女だった。
「"消える?"・・・私がそんなことは、させない」
赤い髪をした彼女の肩には、白い兎が乗っていた。
「アイナさん、ニック・・・!」

「――――」

アイナは空に手を突き上げ、魔法を唱えたかと思うとその手をまっすぐに振り下ろす。
赤い空に雷が突如現れ、ミマルの正面に向かって激しい音を立てて落ちた。
直撃はしなかったものの、その衝撃にミマルは動けなくなった。
アイナはそんな姿を見ながら、不敵に笑った。
「・・・再びもしも戦争を起こそうとする者がいるなら、この雷がその者の体を貫くだろう。
何十年、何百年、何千年と、この雷がお前たちを見ていることを忘れるな」
「―・・・」
そう言うなり、魔女アイナと兎のニックは姿を消した。
呆然と皆は立ち尽くしていたが、その内、アテナの兵の一人が地面に膝をついた。
それにつられ次々と兵達がミツキとセンリに頭を下げていく。
メルディスの兵達も同じであった。
― 全ての者が、戦うことを放棄した。

しかし、問題が解決したわけではなかった。
そもそも事の発端は王子の所在についてだった。
長期的な話し合いが必要になってくるだろう、そう思われた。
だが幼き王子は言った。
「父上、母上、メルディスへ行ってください。
僕はアテナンティスに残ります、 ― アテナの王子として」
覚悟を決めた王子の目は、父親の幼い頃と同じ、まっすぐな目をしていた。
ミツキは息子を強く抱きしめた。
「大丈夫ですよ、母上・・・」
息子 ― ミノリは微笑んだ。
「僕は父様と母様の息子ですから」

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