FC2ブログ

スポンサーサイト

 --,-- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

1-2 大好きな君の手紙(2)

 17,2016 11:03



あの日以来、引き出しの鍵は閉めたままにしている。
手紙を何通も同時に受信するわけにはいかない。
そして何より僕には、宮森 藍那から受け取った未処理の手紙がある。
手紙はどうすることもできず、鞄に入れたままにしてあった。
叶う可能性がもしあるのであれば、―でも 。
「綾、何か考え事?」
声をかけられてはっと顔を上げると、心配そうに見つめる友人の姿があった。
「・・・千里さん」
思わず彼の名前を呼ぶと、千里は首を傾げた。
「時々俺の事を"さん"付けで呼ぶよな。なんでだ?」
「えっと、なんとなく・・・」
「なんとなく?まあ、いいけど」
そう言って千里は気にした様子なく、涼しげに笑う。
とても自然な柔らかな笑顔。
この外見で、運動はできるし性格もいいし、女の子達が好きになるのも当然だ。
更に千里は誰に対しても親切で…だから勘違いをしてしまう子も多い。
だけど、僕は知っている。
彼から直接聞いたわけじゃない。
でも、彼の目を見ていればわかる。
ほらまた、無意識に見つめている。
大切なものを見守っているような、とても優しい表情で。
そんな目で見てもらえる女の子はたった一人しかいない。
「君が早く言わ(告白し)ないから、こーゆうことになるんだよ」
ため息交じりにそう呟けば、不思議そうに千里は僕を見た。
「・・・何を?」
「何でもないですー」
少しからかうように笑いながらそう言うと、僕は千里と部屋を出た。
次は体育の授業だった。
更衣室に向かっている最中にC組の友人―増岡が声をかけてきた。
「新倉のクラス、俺らのところより英語進んでいるよな?」
「うん、多分ね」
「教科書借りていいか?」
「いいけど、鞄に入ったままかも。取っていっていいよ」
「分かった。借りるわ、さんきゅ」
そう言って増岡は教室の方へ走っていった。
さて、と。
体を上にぐっと伸ばす。
次の体育はバスケだったはずだ。
水泳を除いた大抵のスポーツは好きだ。体育の授業だけはやる気が出る。
チーム対抗なら、はりきって頑張ろう。
そう思って着替えを終わらせ、体育館に向かった。


その30分後。
僕は自分のチームの試合が終わったところで、とんでもないことに気が付いてしまっていた。
他のチームの試合を観戦しているように見せながら、僕は内心焦っていた。
嫌な汗をじんわりと背中に感じる。
まずいことになった。
それはここに向かう前に、友人の増岡に言った自分の一言にある。
"「鞄に入ったまま」"
増岡に言ったあの言葉に偽りはない。
教科書は鞄にある。否-教科書"も"、鞄にある。
他に僕の鞄の中にあるものと言えば。
「あの手紙、どこに挟んでおいた・・・?」
脳裏に水色の綺麗な封筒が過った。
鞄にそのまま入れていたらぐしゃぐしゃになってしまう。
そう思ってちょうど今朝、教科書に挟んだのを覚えている。
しかしどれに挟んだかは正直記憶になかった。
もしも。そう、もしもあの英語の教科書に挟んでいたら―。
「…僕は馬鹿か!」
僕は、そっと自分と同じチームにあった知紘にトイレに行くと告げて体育館を後にした。
出ていく時に、わぁっと黄色い歓声が後ろから聞こえてきた。
きっと千里がシュートを決めたんだろう。
だが僕は振り返らずに、一心不乱に教室へと走り急いだ。
教室へ着くと僕は自分の鞄をひっくり返し中身を一気に出すと、
教科書一つ一つをペラペラとめくっていく。
古文、科学、数学、そして。
僕は思わず大きく息を吐いた。
今手のひらにある情報の教科書の一番後ろのページ。
そこに、探していた手紙はひっそりと隠れていた。
「よかった・・・」
僕は机に腰かけると、そっと優しくその手紙を教科書から取り出した。
万が一増岡に見つかったら、僕がラビットメールの支配人であることがバレる所だった。
いや、それ以上に見つかってまずいのは手紙の内容だ。
増岡は誰かに他人の手紙を見せびらかせたりするような奴じゃない、
だけど増岡以外が手紙に気づいてしまったら、どうなる?
噂が広まってしまったら、傷つくのは誰だ?
彼女、だ。
僕は手紙を静かに見つめた。
届けられることのない手紙。僕は一体これをどうしたらいいんだろう。
届けることも、返すこともできずに。
-・・・いや、返してしまえばそれで全て解決してしまうんだろう。
だけど、僕は彼女を傷つけたくなくて。
どんなに不可能に近い可能性しかなくてもそれに縋っていてほしくて。
だからこの手紙は僕が預かっているしかない、絶対に誰にもバレることなく。
「どうして、その手紙を持っているの?」
なんて見つかることなく。
・・・?あれ、僕今思っていることを口にした?
違う。今の声は僕の声ではない。
「・・・・・・・」
僕は手紙を見つめたまま、呼吸を止めた。
もしかしたらそれと一緒に心臓も止まってしまうんじゃないかという錯覚さえ覚えた。
視線を感じた。刺すような強い視線を。
張り詰めたような静寂の空気の中、僕の喉がごくりと唾を飲む音を響かせた。
固く上手く動かない首をどうにか、声のした方に向ける。
まるで壊れた人形のような不自然な動きだったかもしれない。
そして、教室のドアの所で呆然とたたずむ彼女と目が合った瞬間に僕は悟った。
最高のバッドエンドを。
「新倉君が・・・ラビットメールを?」
訝しげに眉を寄せた宮森 藍那が僕をじっと見ていた。



→ menuに戻る
→ net novel ranking
スポンサーサイト

Comment - 0

Latest Posts

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。