FC2ブログ

スポンサーサイト

 --,-- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2-3 君は誰のもの?(1)

 22,2016 21:01



『―・・・へえ、今日そんなことがあったの?』


3

僕はラビットメールの調査に、バスケ部の見学をさせてもらうことになった。
蛍川君との距離を近づけるために、あくまで見るだけのつもりだったのに、
バスケ部の顧問が「見るだけではつまらないだろう」と
ありがたいことに、いや、ありがた迷惑なことに練習に参加するように言ってきたのだ。
まあ調査の一環ならしょうがない、そう思って僕は一人違う色のギブスを着た。
中学の時に一時期バスケ部に入っていたことがあり、懐かしさを覚える。
バスケ自体は久しぶりだったけれど、案外体はボールに合わせてスムーズに動いた。
蛍川君が試合中だというのに、走りながら嬉しそうに僕に声をかけた。
「バスケ何処かでやってた?」
「中学の時に少しね」
「そりゃあ、納得だ!」
斜め後ろから僕の名前を呼ぶ増岡の声が聞こえた。
「新倉!」
そしてそれと同時に投げられたボールを反射的に掴むと、僕は前を見据えた。
すぐ目の前、左右両方に敵チームの選手がいる。
敵の様子を伺いながらドリブルをした後、僕はジャンプをして蛍川君にパスをした。
「蛍川君!」
それをすかさず蛍川君が、キャッチした。
― その間に、僕は敵のガードを振りきって、ゴール傍まで走る。
ちょうど、そこへボールは戻ってきた。
僕はボールを受け取ると、強く足を蹴って跳躍した。
右手を上に伸ばして、僕はボールをゴールに目がけて投げた。
するとボールは、ゴールの枠にぶつかることもなく綺麗に入って―落ちた。
ピーッと笛の音が鳴った。
よし、入った。
膝に手をついて、呼吸を整えていると後ろから何かが体当たり― もとい抱きついていた。
「すげー!新倉君、かなり動けるじゃん!」
蛍川君が嬉しそうにそう言うもんだから、僕はつられて笑った。
「まぐれだと思うけどね」
「まぐれじゃないだろ、あのドリブルは」
隣に増岡までやってきて、「よくやった」と僕の頭をくしゃくしゃと乱暴にかき回した。
「やー、楽しかったわ。これは今日飲みたい気分だな!」
「・・・え、僕ら未成年ですよね」
「勿論!だから俺らが飲むのはラーメンの汁だな!
 ってことで、今日の帰りは3人でラーメン屋に直行な!」
蛍川君が上機嫌にそう言って、一人で勝手に話を進めていく。
ポカンとしている僕に、後ろから増岡が「いつものことだ」と教えてくれた。
ラビットメールの調査にもなるし・・・いっか。そう思って僕は二人に行くことを伝えた。
そしてその後。ギブスを片付けている時に、
驚いたことに女子バスケ部に交ざり、片づけを手伝っている彼女 ― 藍那を見つけた。
隣には今回のラビットメールの依頼者である水野さんがいる。
もしかして、ラビットメールの調査中?
「―・・・っ」
彼女が真面目で責任感のある子だということは分かっていたけれど、
ここまで積極的に調査をしてくれているとは思ってはいなかった。
嬉しくて、だけどそれを隠したくて、彼女から視線を逸らす。
でもそんな気持ちも束の間、僕はふと息を止めた。
「・・・?」
なんだろうか、何処からか刺すような視線がする。
強烈すぎる、視線が。
相手に勘付かれないように視線がする方をゆっくりと振り向くと、
そこにいたのは、腕を組みながらまっすぐにこちらの方を見ている神戸先生だった。
神戸先生は比較的若く、いつも笑っていて優しい先生という印象が強い。
でも今、いつもの穏やかな笑顔は何処にもなかった。
真剣な瞳。
あの目は、まるで野生動物が草食動物を狩る時の視線・・・言うなれば、
雄が雌を狙っている時のそれにも似ている。
熱っぽい瞳に嫌な予感がした。
先生が見ているのは―・・・。
(藍那…)
僕はそっと近くにいた彼女を再び見る。
彼女は、そんな視線に気が付いていないのか、水野さん達と笑いあっている。
「……まさか」


「蛍川君、増岡。先にラーメン屋行ってて」
体育館を出た渡り廊下、僕は蛍川君と増岡にそう伝えた。
すると二人は「忘れ物?」と声を揃えた。
僕は笑って「そう、忘れ物」と二人に言うと、体育館へと戻る。
体育館から出てくる女子部員の子達の中に彼女の姿はなかった。
そして神戸先生もいない。
さっき、先生が彼女に向けていた視線は、先生が生徒に向ける視線ではなかった。
ひどく、胸騒ぎがする。
自然と足が早足になり、いつの間にか僕は走っていた。
体育館に着き、僕が扉に手をかけたのと先生の声が聞こえたのは同時だった。
「宮森 俺はー!」
体育館の隅に二人はいた。
先生は藍那の片腕を掴み、もう一つの方の手で彼女の頬に手を伸ばそうとした。
恐怖と悲しみで歪んだ彼女の横顔。
予感は見事的中してしまっていた、そうでなければと願ったのに。
先生が彼女に触れていることに怒りが込み上げてくる。
僕は足元に転がっていたボールを救い上げ、
「―嫌っ!!!!!!」
二人の間に向かって、思いきりそれを投げつけた。
ダァン。
ボールは激しい共に真横の壁にぶつかり、床に転がった。
驚いた先生は手をひっこめて転がっているそれを拾い、僕に顔を向ける。
彼女も目を丸くして、僕の名前を呟いた。
「新倉君・・・」
その安堵した表情に、目に浮かんでいた涙に、ひどく胸が締め付けられる。
震える拳を強く握りしめて、先生を睨むと努めて冷たい声で言った。
「その手、離してくれますか ―"先生"」
僕の言葉に先生はその手を離したけれど、彼女の腕は真っ赤になっていた。
どれだけ強く握られたんだろうか。
こんなに跡が残るほど。こんなに、怯えさせるほど。
僕は言葉をつまらせた先生を一瞥すると、
彼女の―赤くなっていない方の腕を掴み、体育館の入り口へと向かう。
彼女が僕の名前を呼んだけれど、すぐに振り返ることはできなかった。
こんな顔を見られたくない。
冷静でない、嫉妬した顔なんか。
改めて気付かされる、僕はこの子が好きなんだ。
誰にも触らせたくないなんて、そう思ってしまうほどに。
僕には何も権利もないのに。
体育館を抜けると、夕日が僕らを優しく照らした。



→ menuに戻る
→ net novel ranking
スポンサーサイト

Comment - 0

Latest Posts

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。